一気にやめた10年間の喫煙 - 小林里奈が語るコールドターキー禁煙成功記
ニコチンパッチも使わない。ガムも使わない。薬も飲まない。一気にやめる。いわゆるコールドターキーと呼ばれる方法で、私は10年間のタバコ生活にピリオドを打ちました。
私は小林里奈、33歳。神戸の三宮にあるヨガスタジオでインストラクターをしています。「ヨガの先生がタバコ?」と思いましたよね。実は、ヨガを始めたのは禁煙がきっかけなのです。順番が逆。まずタバコがあり、次にヨガが来ました。
タバコを吸い始めたのは、23歳のとき。大学を卒業してアパレルの販売員として働き始めた頃です。三宮のファッションビルに入っているブランドで、毎日立ちっぱなしの接客。人間関係のストレスも大きくて、先輩に勧められたメビウスオプションのメンソールにすぐにハマりました。メンソールの爽快感が好きで、フルーツフレーバーのシリーズもいろいろ試しました。
アパレル業界の女性は、意外とタバコを吸う人が多いのです。休憩室がそのまま喫煙室のような店もありました。タバコを吸いながら新作の情報交換をしたり、困ったお客様の話をしたり。タバコは仲間との絆を深めるツールでもありました。
20代後半になると、1日1箱弱。朝の出勤前、昼休み、仕事終わり、帰宅後。決まった時間に決まった本数。完全にルーティン化されていました。
30歳を過ぎた頃から、体の変化を感じ始めました。肌のくすみが気になる。吹き出物が増えた。声が少しかすれるようになった。友人の結婚式の写真を見て、自分の肌の状態に愕然としました。同い年の友人と比べて、明らかに老けて見える。ファッション業界で見た目を扱う仕事をしているのに、自分自身の見た目を損なっていることに気づいたのです。
でも、禁煙を本気で決意したのは、もっと個人的な理由からでした。
当時付き合っていた彼氏に振られたのです。理由はいくつかありましたが、彼が最後に言った言葉が忘れられません。「里奈のタバコの匂い、ずっと我慢してた。キスするとき、正直きつかった。」
ショックでした。でも同時に、「これを機会に変わろう」という思いが湧き上がりました。失恋の痛みを、自分を変えるエネルギーに変えよう。タバコをやめて、新しい自分になろう。そう決めたのです。
なぜコールドターキーを選んだのか。理由はシンプルです。中途半端にニコチンを体に入れ続けるより、一気に断った方が、自分には合っていると直感したからです。10年間の喫煙歴はそれほど長くないし、1日1箱弱ならなんとかなるのではないか。甘い見通しだったかもしれません。でも、そのときの私は、自分の力で乗り越えたいという強い気持ちがありました。
禁煙1日目。手元にあったタバコとライターを全部捨てました。灰皿も捨てました。部屋中にファブリーズをかけて、カーテンを洗濯し、タバコの痕跡を徹底的に消しました。
最初の3日間は、予想以上の苦しみでした。頭痛がひどい。集中できない。イライラが止まらない。手が震える。何度も「コンビニに行けば楽になれる」という声が頭の中で響きました。でも、私は動きませんでした。布団にくるまって、ひたすら耐えました。
3日目の夜、どうしても体を動かさずにはいられなくなって、YouTubeでヨガの動画を検索しました。「初心者向けリラックスヨガ」という20分の動画。見よう見まねでポーズを取り、呼吸に集中しました。吸って、吐いて。吸って、吐いて。その深い呼吸が、タバコを吸いたい衝動を和らげてくれたのです。
これが、私とヨガの出会いでした。
4日目以降、毎朝ヨガをするようになりました。タバコを吸っていた時間を、ヨガの時間に置き換えたのです。朝起きて一服する代わりに、太陽礼拝を5回。昼休みにタバコを吸う代わりに、5分間の呼吸法。仕事終わりに一服する代わりに、10分のストレッチ。タバコが担っていた「リセット機能」を、ヨガが代わりに果たしてくれました。
1週間が過ぎた頃、離脱症状のピークは越えていました。でも、心理的な依存はまだ残っていました。特にきつかったのは、友人との飲み会です。神戸の元町にある居酒屋で、友人たちがタバコを吸っている横で、烏龍茶を飲みながら耐える。「一本もらっていい?」と何度言いかけたかわかりません。そのたびに、トイレに立って深呼吸をしました。
2週目、大きな危機がありました。仕事で大きなミスをして、店長に厳しく叱られたのです。涙を堪えながらバックヤードに駆け込み、タバコを吸いたい衝動に襲われました。このときばかりは、コンビニに走りそうになりました。足が勝手にドアに向かっていた。
でも、その瞬間、スマホのロック画面が目に入りました。禁煙カウンターアプリの通知。「禁煙14日目。節約金額:7,000円。」この数字を見て、足が止まりました。2週間頑張ったのを、ここで無駄にするのか。バックヤードの隅で、ヨガの呼吸法を繰り返しました。5分後、衝動は去っていました。
1ヶ月が経つ頃、体の変化が明らかになってきました。朝の目覚めがすっきりしている。肌のトーンが明るくなった。声のかすれがなくなった。走っても息切れしない。鏡を見るのが楽しくなりました。
2ヶ月目、ヨガにすっかりハマっていた私は、近所のヨガスタジオに通い始めました。初めてスタジオで本格的なレッスンを受けたとき、自分の体がこんなに動くことに驚きました。タバコを吸っていた頃は、深い呼吸すらまともにできなかった。それが今、ヨガの呼吸法で肺いっぱいに空気を取り込める。あの解放感は忘れられません。
3ヶ月目にはタバコのことをほとんど考えなくなりました。匂いを嗅いでも「吸いたい」とは思わなくなった。むしろ、タバコの匂いが不快に感じるようになりました。以前の自分がこの匂いをまとっていたのかと思うと、ぞっとします。
半年後、私はアパレルの仕事を辞めて、ヨガのインストラクター養成講座に通い始めました。禁煙をきっかけに始めたヨガが、人生を変える出会いになるとは思いもしませんでした。1年間の養成講座を経て、現在は三宮のスタジオでインストラクターとして働いています。
禁煙から2年が経った今、私の人生はまったく別物になりました。毎朝5時に起きて、自宅で1時間のヨガ。スタジオでレッスンを教え、生徒さんたちの体と心が変わっていくのを見届ける。夜は早めに寝て、健康的な生活を送っています。
体型も変わりました。禁煙直後は少し体重が増えましたが、ヨガのおかげで引き締まった体を手に入れました。タバコで痩せていた不健康な体ではなく、筋肉のついた健康的な体です。
肌は別人のようになりました。エステに通っているわけでもないのに、「肌がきれい」と言われるようになりました。10年間のタバコで奪われたものを、体が取り戻そうとしているのかもしれません。
先日、新しい彼氏ができました。彼にタバコを吸っていた過去を話したら、「想像つかない」と笑っていました。今の私からは、タバコの気配は微塵もないそうです。
経済的にも、1日500円のタバコ代が、年間約18万円の節約。その分をヨガのワークショップや、オーガニック食材の購入に充てています。体に入れるものにお金をかけるようになった。タバコという毒にお金を払っていた頃とは、価値観が180度変わりました。
コールドターキーは万人向けではないかもしれません。禁煙補助薬を使った方がいい人もたくさんいます。でも、私のように比較的喫煙歴が短く、「自分の力で乗り越えたい」という気持ちがある人には、選択肢の一つになり得ます。大切なのは、タバコの代わりになる新しい習慣を見つけること。私にとってはそれがヨガでした。
神戸の港を見下ろすスタジオで、深い呼吸を繰り返しながら思います。あの日タバコをやめなかったら、この場所にはいなかった。禁煙は、私に新しい人生をくれました。
33歳、まだまだこれからです。タバコのない人生の方が、ずっと長い。その長い未来を、クリアな体と心で楽しみたい。